しまねの地域包括ケア

ホーム > 地域包括ケアとは> 島根県地域医療構想を策定

島根県地域医療構想を策定

地域一体で医療・介護を確保

 国は、2014年6月の医療法改正で都道府県に対し、超高齢化により慢性疾患を抱える患者が増加することを踏まえ、急性期医療に偏りがちなこれまでの病床(ベッド)数を適正化し、医療機関の役割分担を明確にすることを目的に、医療提供体制の見直しを求めた。これまでは一般病床と療養病床に大別されていた医療機関の病床区分を、救命救急や集中治療に対応する「高度急性期」、次いで緊急性の高い「急性期」、リハビリや在宅復帰に向けた「回復期」、長期療養向けの「慢性期」の4つに分類し、地域の実情に応じて必要になる病床数を算出するものだ。
 島根県は昨年10月、国の指針を基に2025年の必要病床数と7つの2次医療圏域(図1参照)ごとの課題と医療提供体制構築の方向性をまとめた「島根県地域医療構想」を策定。必要病床数を現在の8800床から25%減の6570床とした。病床数減少の主な理由は、人口減少と国の方針による在宅医療への移行だ。構想で必要と推計される病床数はあくまでも現段階での目安とされ、地域で実際に必要な病床数は、救急医療機能など各医療機関が担う機能などを考慮して、構想策定後もそれぞれの地域・医療機関において継続的に検討される。
 県は、医療提供体制の確保のため、医療機関の機能分担と相互連携、医療と介護の連携による円滑な入退院時連携体制の構築、医療・介護従事者の確保・育成など、6つの取り組みを柱に、関係機関と協議を進める計画だ。7つの構想区域ごとに医療機関、介護事業者、保険者、住民代表、行政で構成する「地域医療構想調整会議」で、各区域の現状・課題、今後の方向性について議論。検討を進める上で、国の対応が必要なものについては政策提案も行う考えで、県医療政策課長の家本賢氏は、「地域医療構想は、策定がゴールではなく、2025年に向けて適切な医療提供体制構築について検討を進めるためのもので、圏域や地域全体での協議が重要だ」と話している。

地域一体で医療・介護を確保

実態に合う仕組みづくりを

 国が示す医療提供体制の見直しで、団塊の世代が75歳を迎える2025年に向けて病院間の役割分担と連携強化をどう進めていくかという一つの大枠が決まった。高齢化が進んでいる島根県では医療機関が少ない上に医師、看護師不足などが進み、10年以上前から病院間の連携や役割分担といった取り組みを続けてきている。従来やってきたことが法律で決められたことで行政としては進めやすくなったという感覚だ。
 医療と介護をスムーズにしていくためには国、県、市町村の行政側の仕組みづくりが大事。医療、介護などの現場はいくらでも事例は出せるが、仕組みづくりはやはり行政の役割だ。医療間の連携やかかりつけ医を持つという意識付けもまだ不十分。地域包括ケア分野では、川本町のように1カ所で複数の施設を持つ所ではうまくいっている例もあるが、医療依存度の高い人の在宅をどう支援していくかや介護現場との連携など、課題が多い。
 石見部は暮らしや文化で広島県や山口県とつながりが深く、生活圏となっている。医療・介護もこの生活圏の中で完結できるように取り組まなければならない。地域医療構想の大枠は島根県全体でまとめるが、行政の枠組みにとらわれずに現状を理解して医療構想を考えていかねばならない。また、医師確保の問題は、医師一人を育成するために膨大な税金がかかるのだから、国が地域勤務の義務化などの対策をとらないといけない段階にきていると思う。
 医療を受ける側の正しい理解も訴えたい。コンビニ受診や掛け持ち受診による不必要な検査や投薬で安堵感を得る意識を変えていくべきだ。社会保障費は限りがあるもので、医療を取り巻く現状が危機的な状態であることを理解いただきたいし、われわれも周知に努めたい。

まめネットの活用をさらに進める

医療法人 医純会 すぎうら医院 理事長 杉浦 弘明氏

地域包括ケアシステムを推し進めるためには、それぞれの地域事情を鑑みることが重要。出雲圏域では、一人の高齢者に対し、医療・福祉機関や自治体担当者などが複数に絡み合っているため、各機関の連携が一層重要になる。県内の病院や診療所、薬局、訪問看護ステーションなどが、患者の医療情報を共有できる「まめネット」は非常に有効なツールだ。出雲は登録施設も同意患者数も多く、うまく実働している。
 医療職であれば、同意患者の情報はカルテや検査画像まで安全にネットでやり取りできるので、効率的な治療が行える上、医療のクオリティーも上がる。まめネットを活用し、在宅ケアに関わる専門家たちが情報を共有、活用できるシステムも動き出している。事務仕事をできるだけ効率化し、患者とのコミュニケーションの時間をより濃密にするのが狙いだ。
 一方で、地域医療の質を考える上で忘れてはならないのが、「食」。人間の根源に関わる食は、患者の生活の向上、症状の改善につながる。管理栄養士との連携も不可欠だ。

田舎でこそスキルミックスが必要

社会医療法人 仁寿会 加藤病院 理事長 加藤 節司氏

中山間地域で訪問診療をするにも、冬場には道路状況が悪いなど、車を運転する医師や看護師にリスクがあった。昼間は専属の運転手を雇い、休日や夜間はタクシー移動に変えた。リスクの中で移動するのが地域包括ケアシステムとも言えるので、医療の効率をどう高めるかが大事。その一つの糸口がICT(情報通信技術)であり、人が移動する以上は道路も必要だ。
 人材が少ない山間部では、スキルミックス(多職種協働)を進め、いくつかの仕事を同時にこなすことが求められる。病院では、島根と広島両県の大学生を研修で受け入れ、チーム医療の効果がどれだけあるかを体験してもらっている。田舎でこそスキルミックスが必要と分かり、2025年問題に対応できる人材を育てることができる。
 地域医療構想で医療提供体制が変わる中でも、在宅療養を支援することによって、人の尊厳と住む地域を守り、社会の連帯を高めることにつながると思う。

PAGE TOP