生涯を通じた健康で質の高い生活を送るためには、正しい生活習慣を身につけ、日ごろから生活習慣病予防に務めることが大切です。これまでの健康管理は、自分自身で食生活や運動習慣、休養に気を配るなど、個人に対する取り組みが中心でした。しかし、生活習慣病予防の増加・若年化やメンタルヘルスの問題など、個人への対策だけでは解決出来ない課題も多く、企業や地域社会全体で取り組む必要性が高まっています。
 いま、従業員の健康増進を図ることで生産性や企業カチを高める「健康経営」という考え方が全国的に注目を集めています。そこで、山陰中央新報社では、島根県や全国健康保険協会島根支部、県商工会議所連合会などの関係団体と協力し、「健康経営推進で健康長寿日本一へ しまね健康づくりキャンペーン」を展開します。

対 談

吉川敏彦部長(島根県 健康福祉部)×大塚正明支部長(協会けんぽ島根支部)

 少子高齢化時代の労働力確保や生活習慣病の増加、メンタルヘルスに対する関心の高まりなどを背景に、企業が従業員の健康づくりをサポートすることにより企業価値の向上が期待できるという「健康経営」の視点が注目されています。

中小企業などで働く従業員と家族など多くの加入者を抱える全国健康保険協会(協会けんぽ)では経済団体など各種団体や自治体などとも連携して「健康経営」の普及、促進に取り組んでおり、島根県内でも同島根支部と県が平成28年度に「ヘルス・マネジメント認定制度」を創設するなど、積極的な取り組みをしています。

今回の特集では、島根県健康福祉部の吉川敏彦部長と、協会けんぽ島根支部の大塚正明支部長に県内の状況、健康づくりへの取り組みなどを聞きました。

「働き盛り世代の健康度向上を」吉川

県内の働き盛り世代の現状

 吉川 :島根は全国的に見ても長寿県ですが、日常生活を制限されないで過ごせる期間の健康寿命を延ばし、平均寿命に近づけていくことが大事です。特に働き世代の人たちは仕事に追われ、健康への意識が低く、40歳代から脳卒中、糖尿病などの発症が増しており、男性は女性の約2倍という課題があります。
 大塚 :協会けんぽは、平成20年にそれまでの政府管掌健康保険から民営化組織の公益法人として発足しました。全国に47支部あり、中小企業200万社の従業員と家族の3800万人が加入する日本最大の医療保険者です。島根支部には現在、1万2千の事業所の従業員とその家族25万人が加入していて、加入者の健康増進▽良質・効率的な医療の提供▽加入者と事業主の利益の実現を基本理念にさまざまな事業を展開しています。

健康経営の必要性について

吉川 :県民1人当たりの医療費の3割が生活習慣病に起因するもので、若い頃からのがん、高血圧、糖尿病などの予防や重症化防止対策が医療費の適正化につながります。また、介護が必要になった40〜64歳までの方の主な原因では、男女とも脳卒中が一番多く、男性は50%を超えます。健康寿命を延伸していく観点からも若い世代の脳卒中予防、基礎疾患の高血圧対策が重要になってきます。働き盛り世代の健康度を高める必要があり、各事業所の健康づくりとしての健康経営の取り組みを支援し、健康に関する情報提供などにも努めていきます。

大塚 :高齢化に伴う労働力不足が進む中、メンタルヘルス、生活習慣病対策や禁煙進など企業側の健康対策が喫緊の課題となっています。企業は従業員の健康を重要な経営資源ととらえ、健康づくりに積極的に関わり支援していく視点が大事になっています。長期欠勤者が減れば生産性が向上し、企業のイメージアップや良質な人材の確保にもつながるメリットも期待できます。医療費の適正化が進むことで、保険料負担の軽減にもつながるという観点からも健康経営の普及・促進に取り組んでいます。

「企業とのコラボヘルスを推進」大塚

県民の健康づくり推進に向けた連携協定

大塚 :平成26年度以降島根県をはじめ県内全19市町村、医療関係団体等と「県民の健康づくり推進に向けた連携協定」を締結しています。各自治体と協会けんぽの医療費データを統合して健康維持対策に取り組み、協会けんぽの被扶養者には、各自治体が実施するがん検診と特定健診のセット受診の促進を図っていきます。

吉川 :健康寿命の延伸を図るには生活習慣病の予防が一番。特にがんや糖尿病、脳卒中予防対策などについて各種団体、市町村、医療機関と連携体制で取り組んでいます。県内最大の被保険者がいる協会けんぽ県支部との連携は、県が取り組む県民の健康づくり推進計画を進めていく上でも重要だと思います。

ヘルス・マネジメント認定制度

大塚 :島根支部では平成28年度から県と共同で「ヘルス・マネジメント認定制度」をスタートさせています。経済団体、社会保険労務士会とも連携して周知に努めていて、現在の宣言事業所数は253社、認定事業所数は30社。平成32年度に1000社達成を目標に取り組んでいます。
この制度は、まずは、事業所に「健康宣言」をしてもらうことからスタートします。本年度は新たに職場での健康講座の無償提供や、健康度測定機器の一定期間無償貸与も予定しており、さらに制度の周知を図るとともに、優遇制度についても拡充に向けて是非とも県の協力をお願いしたいと考えています。

吉川 :県も認定事業所を「しまねいきいき健康づくり実践事業所」の好事例として県のホームページに掲載するなど、積極的に情報提供を進めていきます。

健康経営とは

 健康経営とは、従業員を企業における「資産」と捉え、健康の維持・増進が将来的に企業の収益性を高める積極的な投資であるとの考えのもと、従業員の健康管理を経営的な視点から考え戦略的に取り組むこと。従業員の活力向上や生産性向上等の組織活性化をもたらし、結果的に業績向上などにつながると期待される。  また、国民の生活の質の向上や国民医療費の適正化など、社会課題の解決に貢献するものであると考えられている。

主唱/山陰中央新報社、全国健康保険協会島根支部

特別協賛/アクサ生命保険

後援/島根県、島根県健康福祉部、島根県商工労働部、島根県商工会議所連合会、島根県商工会連合会、島根県中小企業団体中央会、島根経済同友会、島根県経営者協会、島根県医師会、島根県社会保険協会、島根県社会保険労務士会、島根労働局

企画・制作/山陰中央新報社ビジネスプロデュース局