生涯を通じた健康で質の高い生活を送るためには、正しい生活習慣を身につけ、日ごろから生活習慣病予防に務めることが大切です。これまでの健康管理は、自分自身で食生活や運動習慣、休養に気を配るなど、個人に対する取り組みが中心でした。しかし、生活習慣病予防の増加・若年化やメンタルヘルスの問題など、個人への対策だけでは解決出来ない課題も多く、企業や地域社会全体で取り組む必要性が高まっています。
 いま、従業員の健康増進を図ることで生産性や企業カチを高める「健康経営」という考え方が全国的に注目を集めています。そこで、山陰中央新報社では、島根県や全国健康保険協会島根支部、県商工会議所連合会などの関係団体と協力し、「健康経営推進で健康長寿日本一へ しまね健康づくりキャンペーン」を展開します。

 健康経営セミナー(全国健康保険協会(協会けんぽ)島根支部主催、島根県、山陰中央新報社共催、アクサ生命保険特別協賛)が2月23日、松江市のくにびきメッセ国際会議場で開かれました。東京大学政策ビジョン研究センター特任助教古井祐司氏、中国経済産業局産業部流通・サービス産業課サービス産業係長上田斉氏が講演。協会けんぽ島根支部の永海健治氏が事業説明しました。県内企業の役員など約180人が参加。企業の成長や価値を高める健康経営について理解を深めました。

【講演:1】
今日から取り組む健康経営---職場の生産性維持に不可欠

 健康経営とは、従業員の健康への投資が企業の生産性の向上につながる、という考え方で、2008年に経済産業省が「健康会計」として提唱しました。近年、企業における健康への投資がますます重要な時代になった︱と感じています。中小企業白書でも明らかなように全ての業種で、人材不足が進んでいます。一方で、新卒者など求職者側では、従来のように賃金や企業の知名度より、労働時間や職場環境を重視する傾向が強まっています。人口構成など社会構造の大きな変化に伴い、新規人材の確保には、職場環境の整備はきわめて重要といえます。同時に、既存の人材を活用することも大切です。
 既存の人材を活用する場合、平均年齢の上昇という課題に直面します。平均年齢の上昇は、生活習慣病の重症化という問題を内包します。心疾患による死亡率を、30歳代前半を「1」とした場合、40歳代は「3」、50歳代は「7」に高まります。今日、60歳代で働いている人は珍しくありませんが、当然、体調不良の人も増えてきます。企業にとって、体調を維持する環境を整えることが、重要な課題となります。
 健康リスクの上昇は、生産性の損失に直結します。体調不良で休む人が増え、出勤してもモチベーションを保てない人が多いと生産性に影響が出ます。40人規模のビルメンテナンス会社では、10年以上新卒の採用ができず、従業員が高齢化。夜勤を廃止して外注に出し、人件費コストは2割上昇したが、売り上げはそれ以上にアップしました。仕事が丁寧になり、顧客満足度が上昇、地域貢献も評価されたからです。欧米では、健康経営に取り組む企業は経営パフォーマンスが良いことがすでにデータ化されています。
職場の生産性を維持するためには、健康への攻めの取り組みが不可欠です。いわゆる働き盛りの世代は、自らの努力だけで健康を維持することが困難だからです。総死亡に対する突然死の割合を年代別に見ると、40歳代前半が約3割でピークです。そのうち86%は生活習慣病が原因です。しかも、倒れた方の3人に2人は、1年以内に病院で診察を受けていない、という残念なデータがあります。
 職業別に見ますとシステム系の職場の人は、若くても血圧が高い傾向があります。長時間の緊張が原因と思われます。どこかで一息入れてほしいですね。顧客とのコミュニケーションが欠かせない営業系の人は、血糖値が高く、飲み方に工夫が必要です。交替制勤務の職場は高脂質で脂肪肝になりがちです。飲んでから寝るのが原因と思われます。お風呂に入ってリラックスして、質の良い睡眠をとってほしいと思います。
 このように、働き方が健康リスクに大きく影響します。まず、小さな一歩を踏み出すことが大切です。そのためには経営者の「やる気」が不可欠です。ある輸送業者は、朝の点呼の際、体重計に乗ることを義務付け、肥満度が改善しました。自動販売機のお茶の値段をジュース類より安くしたり、食堂のメニューを定食一本にしたりし、成果を上げている職場もあります。このように職場動線に着目した取り組みは無理がなく有効です。
 何をしていいか分からない場合は、協会けんぽに相談しましょう。特定健康診査や保健指導を行ってくれます。取り組みのノウハウも持っています。健康経営によって社員の健康に対する感度が高まります。そうした成果を、経営者が会議などで話すことによって、取り組みが広がります。健診データは協会けんぽに提出してください。蓄積が地域の健康づくりの大きな財産になります。
政府の日本再興戦略に「データヘルス計画が」盛り込まれました。商工会議所、自治体、協会けんぽなどと協働した健康経営が、ますます求められます。

【講演:2】
ヘルスケア産業の創出に向けて---健康経営は人材確保に効果

 まず、島根県の構造変化を知っていただきたいと思います。GDPは、医療・福祉といったサービス業が増加傾向にあり、雇用でも農業、製造、建設といった産業が減少し、医療・福祉といったサービス業が増加しています。
島根県の人口は1955(昭和30)年頃をピークに減少を続け、2035年には55万人になると予測されています。この間で特徴的なことは、15歳未満の年少人口が65歳以上の高齢者を下回り、全体の中での比率が逆転することです。また、市町村別の将来人口を予測すると、ほとんどの地域では高齢者も減少する人口減少社会に突入していきます。また、全ての地域で働き手となる生産年齢人口が減少していきます。こうした状況を踏まえてお聞き下さい。
 経済産業省が実施した中小企業向けのアンケートでは4割が、人材不足が課題と回答しています。人材が確保できない現実がありますが、労働人口そのものが減少している影響も大きいと考えます。従って、既存の人材を活用しなくてはいけません。その方策として▽従業員一人一人の能力の最大化▽従業員の就労期間の長期化▽人材市場での優位性の確保︱3点を挙げ、そのための経営手法として健康経営の導入が有効です。
 本年度実施した意識調査では、健康経営について内容を知っている経営者は、わずか1割。しかし、「実施している」「実施したい」を合わせると7割を占めました。その目的は、社員の満足度、モチベーションの向上、生産性の向上が多くを占め、人材投資という認識があることが分かります。
 健康経営に取り組む上での課題としては指標、ノウハウ不足が多くを占め、動機付け(インセンティブ)も求められていることが分かりました。これを受け、「健康経営ハンドブック」を策定、「アドバイザー制度」を創設し、年度内に運用を開始する予定です。健康経営優良企業認定制度の創設と優遇措置も検討しています。
 地域版ヘルスケア産業協議会についてお話しします。社会福祉分野の課題をビジネスで解決する官民による場づくりで、各地に設置を働きかけています。中国地方では、岡山市に近く発足する予定です。同市は、健康増進に取り組む企業や団体を「健康推進応援団」として独自に認定・登録し、社名や団体名をホームページで紹介しています。これがリクルートにも効果的と考えます。
 市区町村は、社会保障費の適正化という課題を抱え、相談をよく受けます。中国地方でヘルスケアへの取り組みが加速化することを期待しています。

【講演:3】
「ヘルス・マネジメント認定制度」について---認定事業所に各種優遇制度

 健康経営を推進していくために創設した「ヘルス・マネジメント認定制度」について説明します。この制度は、全国健康保険協会島根支部が、島根県と山陰中央新報社の3社共同事業として、県内の経済団体、金融機関と連携して実施します。協会けんぽ加入事業所が、認定事業所となった場合、認定証を交付、表彰状を贈呈します。認定事業所は各種優遇制度を活用できます。
 島根県商工会議所連合会、同商工会連合会、同中小企業団体連合会、同経営者協会とは、健康経営推進に向けて協定を締結します。
 制度の概要を説明します。まず、事業所の健康管理態勢の現状をチェック。認定を目指して取り組む健康宣言をするため、協会けんぽのホームページに掲載するシートに必要事項を記入しエントリーします。協会けんぽからは、健康事業所宣言の証を送付しますので、従業員に周知を図り、健康づくりがスタートします。ヘルスマネジメントカルテも送付します。従業員の健康状態を、データを元に見える化したもので、具体的な取り組みの参考にしていただければ、と考えています。
 認定手続きは、健康宣言チェックシートの評価項目の合計が80%を越えることが見込まれた場合、申請書を提出します。チェックシートは健診・重症化防止、健康管理・安全衛生、メンタルヘルス対策などの22項目です。
 認定審査は、事業所を訪問しチェックシートを元にヒヤリングを行います。基準のクリアが確認されれば島根県と協会けんぽ連名の「認定証」を交付します。認定を受けた事業所は島根県の「しまねいきいき健康づくり実践事業所」として登録されます。協会けんぽ島根支部のホームページや広報紙でも公表する予定です。
 表彰状の贈呈は、複数年連続して認定基準をクリアした場合で、3年、5年、10年の3段階です。優遇制度は、提携金融機関の貸出金利について実施する予定です。島根県と建設工事の入札資格審査における加点ついて協議をしています。
 認定制度については、4月から運用がスタートします。多くの事業所の参加をお願いします。

主唱/山陰中央新報社、全国健康保険協会島根支部

特別協賛/アクサ生命保険

後援/島根県、島根県健康福祉部、島根県商工労働部、島根県商工会議所連合会、島根県商工会連合会、島根県中小企業団体中央会、島根経済同友会、島根県経営者協会、島根県医師会、島根県社会保険協会、島根県社会保険労務士会、島根労働局

企画・制作/山陰中央新報社ビジネスプロデュース局