健康経営で企業の生産性向上
生涯を通じた健康で質の高い生活を送るためには、正しい生活習慣を身につけ、日ごろから生活習慣病予防に努めることが大切です。これまでの健康管理は、自分自身で食生活や運動習慣、休養に気を配るなど、個人に対する取り組みが中心でした。しかし、生活習慣病の増加・若年化やメンタルヘルスの問題など、個人への対策だけでは解決できない課題も多く、企業や地域社会全体で取り組む必要性が高まっています。
いま、従業員の健康増進を図ることで生産性や企業価値を高める「健康経営」という考え方が全国的に注目を集めています。そこで、山陰中央新報社では、島根県や全国健康保険協会島根支部、県商工会議所連合会などの関係団体と協力し、「健康経営推進で健康長寿日本一へ しまね健康づくりキャンペーン」を展開します。
キャンペーン1回目となる今回の特集では、島根県健康福祉部の藤間博之部長に県民の健康状況や「健康経営」の必要性などを聞きました。
島根県民の健康状況
島根県民の健康状況を話す上で、健康寿命が重要になってきています。健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間です。島根県は平成22年の数値で平均寿命、健康寿命いずれも女性は全国トップクラスですが、男性は全国平均並みです。男性は女性よりも喫煙率や肥満者の割合が高く、脳卒中の発症率は女性の2倍です。
健康寿命を平均寿命に近づけるためには、高齢期に入るまでに、生活習慣病予防やロコモティブシンドローム(筋肉、骨、関節などが徐々に衰える運動器症候群)予防などがカギとなります。
就労者の健康状況、健康への意識
島根県の生活習慣病予防を目的とした特定健診(40~74歳対象)の受診率は42・6%(平成26年度)で目標の60%に届いていません。島根県内約1万の事業所の約半数が従業員9人以下で、事業規模が小さいほど健康づくりの取り組みが進んでいません。
特定健診のまとめを見てみると、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が受診者全体の17・1%で、予備軍も10・4%でした。また、38%が高血圧の薬を服用中でした。別の調査では働き盛りの40歳代から脳卒中や糖尿病の発症が増えています
中小企業が多い島根県の取り組み
働き盛り世代は生活の中で健康に関する情報を得にくい世代なので、啓発が重要です。島根県は関係機関と協力して啓発や支援に取り組み、全国健康保険協会島根支部とも協定を結び、特に働き盛り世代の健康づくりに取り組んでいます。
圏域ごとに様々な取り組みがあり、労働関係団体などと協力して実施する事業主セミナーなど、地元のニーズに合った内容で開催し、多数の参加をいただいています。熱心に取り組む事業所の表彰制度を設けているところもあり、全県展開に向けて今後検討していきます。また、生活の中で食を含む健康に関する情報を得やすいようスーパーと連携した啓発物の展示など情報発信に努めています。
健康経営の普及
事業主セミナーなどでは、すでに健康経営の視点で実施しているところもあります。島根県では特に男性の健康づくりや生活改善が大切です。働き盛り世代が元気でいきいきと活躍することは、健康経営における「社員の健康は重要な経営資源」と通じるところであり、少子高齢化が進む中、県にとっても重要な活力資源です。
社員の健康に気を付けている企業に社員が集まり、その企業が成長していけば、県のイメージアップや定住促進にもつながります。県としても健康経営の取り組みが今後さらに広がるよう協力していきたいです。
健康経営とは
健康経営とは、従業員を企業における「資産」と捉え、健康の維持・増進が将来的に企業の収益性を高める積極的な投資であるとの考えのもと、従業員の健康管理を経営的な視点から考え戦略的に取り組むこと。従業員の活力向上や生産性向上等の組織活性化をもたらし、結果的に業績向上などにつながると期待される。
また、国民の生活の質の向上や国民医療費の適正化など、社会課題の解決に貢献するものであると考えられている。
日本政策投資銀行では、同行独自の評価システムで融資対象候補企業に対する健康審査を実施し、健康経営に優れた企業を評価・選定したうえで、その評価に応じて融資条件を設定する健康経営格付・優遇金利制度を2012年3月から適用している。こういった金利優遇制度は、広島銀行や東邦銀行(福島県)、常陽銀行(茨城県)など、全国の地方銀行にも広がりを見せている。